ビュッフェ・クランポン Divine 徹底解説|RC系統の思想を磨き上げたフラッグシップ | Buffet Crampon
クラリネット深掘り特集・第7回
“Divine”とは ― RC系統の思想と2026年の進化
〈ビュッフェ・クランポン〉“Divine”は、RC系統の設計思想を磨き上げ、丸みのある柔らかな音色と、倍音豊かな響きを備えたフラッグシップモデルです。〈ビュッフェ・クランポン〉のプロフェッショナルクラリネットにおいて、R13系統が明瞭さと遠達性を軸に発展してきたのに対し、RC系統は均整と厚みを核として発展してきました。“Divine”は、そのRC系統の頂点に位置します。
2012年、ポール・メイエを中心とする国際的な研究・検証プロジェクトから誕生。RC系統の音響的な個性を受け継ぎながら、イントネーションの信頼性、音域間の均質性、奏者の意図に自然に応えるレスポンスを追求してきました。
2026年、“Divine”は新たな段階へ進みます。
リニューアルが目指したのは、別の楽器に変えることではありません。“Divine”らしい響きと基本的な内径設計を受け継ぎながら、ベル内部、キーワーク、接合部、バレル、外観を見直し、レスポンス、音域間の均質性、操作性、演奏時の安定感をさらに磨き上げることでした。
本記事では、2012年の誕生を支えた音響設計と技術的特徴に加え、2026年のリニューアルで何が受け継がれ、何が進化したのかを詳しく解説します。
- RC系統のフラッグシップ
- ポール・メイエを中心とする国際的検証プロジェクト
- 丸みのある音色と倍音豊かな響き
- 音域全体の音程整合性を大幅に改善
- カーボンファイバー製リングによる軽量化(約60g)
- 上管要所にグリーンライン挿入
- 2026年、ベル内部、キーワーク、接合部、バレルを中心にリニューアル
- キーポストにピンクゴールドめっきを施した、華やかで洗練されたデザイン
“Divine”は〈ビュッフェ・クランポン〉クラリネットショールームにてご試奏いただけます。
ショールームのご案内
RC系統の設計思想については、こちらの記事で詳しく解説しています。RC深掘り記事
開発背景 ― 2012年、5〜6年にわたる音響研究プロジェクト
“Divine”は、特定奏者のためのモデルではなく、国際的な演奏現場における要求精度を基準として設計されたモデルです。
プロジェクトの中心となったポール・メイエは次のように語っています。
「特定の一人のための楽器ではなく、国際的な視点から検証された楽器を目指しました。」
ミシェル・アリニョン、パスカル・モラゲス、ニコラ・バルディルーをはじめ、世界各国の主要オーケストラ奏者が開発段階に参加し、各段階での試奏と検証が設計に反映されました。
開発にあたっては、RC系特有の丸みある音色を維持しながら、ブランドの基準機であるR13系統フラッグシップ“Tosca”に匹敵するイントネーションの安定性と音程精度の実現が重要な目標とされました。
ポール・メイエはインタビューで、「楽器がこちらに何かを強いるのではなく、音楽の要求に即座に応答する状態を目指した」と語っています。
その結果、“Divine”はRC系統の音響的個性を保ちながら、現代の高度な演奏環境に対応する均質性と柔軟性を兼ね備えたモデルとして完成しています。
→ R13系フラッグシップ“Tosca”については、別記事で詳述しています。:Tosca深掘り記事
設計の核心
1. Tosca音孔配列の採用(RC系内径との融合)
“Divine”は、R13系統フラッグシップ“Tosca”の音孔配列設計を採用しています。
これにより:
・全音域での音程整合性の向上
・音域間移行の滑らかさ
・厳しい演奏条件下での発音安定
が実現されています。
ただし、内径構造はRC系統を基盤としています。
すなわち、RC系の広めの内径に、Toscaの音孔設計を整合させるための丁寧な検証が重ねられました。
これは単なる仕様転用ではなく、多くの試作と検証を経て整合が図られた結果です。
2. 内径設計の再検証
RC系統はR13系統よりも広めのポリシリンドリカル内径を持ちます。
“Divine”ではこの内径思想を維持しながら、音孔配置との整合性をより高い次元で磨き上げています。
結果として:
・音域間の均質化
・音程の安定
・応答性の向上
が全体設計として統合されています。
3. カーボンファイバー製リング(特許技術)
従来の金属リングを廃し、カーボンファイバー製リングを採用。
・約60gの軽量化
・重量バランスの最適化
を実現するとともに、木材本来の振動特性を活かす設計が行われています。
4. グリーンライン挿入(上管要所)
A♭トリル孔、トリルキー孔、シャルモーキー孔など、応力が集中しやすい箇所にグリーンライン素材を挿入。
これにより:
・微細な亀裂による気密低下の抑制
・タンポ接地部への亀裂進行の抑制
・演奏中の気密安定
が意図されています。
5. 2012年モデルの接合部設計
2012年に誕生した“Divine”では、接合部の気密性と経年安定性を高めるため、圧縮しにくい特殊合成ポリマー素材が採用されました。
・経年劣化による圧縮防止
・接合部の気密安定
2026年のリニューアルでは、この接合部が天然コルクとOリングを組み合わせた新しい構造へ変更されています。詳細は「2026年の進化」で解説します。
6. Divine専用キーワーク
“Tosca”で採用された人間工学的なキーの設計の思想を踏襲しつつ、より多くの奏者が自然に扱えるよう、キーワーク全体に改良が加えられています。
・新設計キーワーク
・新スパチュラ
・LowFキー装備
2026年のリニューアルでは、この基本思想を受け継ぎながら、リングとスパチュラの形状、指かけ等がさらに見直されています。
発売当時に公開された開発責任者、テスターによる説明動画
【YouTube動画】
チャンネル:Buffet Crampon Official (Paris)
動画タイトル:Paul Meyer & Éric Baret – Divine Development
ポール・メイエとエリック・バレが“Divine”の開発思想と技術的特徴について語る記録。
2026年 ― “Divine”らしさを受け継ぐ進化
2026年、“Divine”は誕生以来の音響的な個性を受け継ぎながら、現代の奏者が求めるレスポンス、均質性、操作性、演奏時の安定感をさらに高めるため、細部にわたるリニューアルを行いました。
今回の開発・検証はポール・メイエを中心に、フローラン・エオー、パスカル・モラゲスをはじめとするテスター陣と、開発責任者エリック・バレとの協働によって進められました。
変わらないもの ― RC系統の音響的アイデンティティ
今回のリニューアルでも、“Divine”の音響的な核となるRC系統の基本的な内径設計は変更されていません。
受け継がれたのは、
・RC系統を基盤とする丸みのある柔らかな音色
・倍音豊かな響き
・音域全体のバランスの良さ
・奏者の表現に応えるレスポンスの良さ
です。
目指したのは、“Divine”を別の楽器に変えることではなく、その個性を保ちながら、より自然に、より確実に、より自由に演奏できる楽器へと完成度を高めることでした。
新しいベル内部設計
今回の音響面における中心的な変更が、ベル内部の再設計です。
ベルの外観や長さではなく、内径を見直すことで、楽器全体にわたる即時性の高いレスポンスを追求しました。特にクラリオン音域、いわゆる第2レジスターでは、発音がより容易になり、素早いレスポンスが得られます。
この再設計がもたらす主な変化は、
・全音域にわたる素早く確実なレスポンス
・音域間の均質性と滑らかなつながり
・豊かな倍音
・コントロールされた遠達性
です。
イントネーションの微調整
今回のリニューアルでは、“Divine”固有の音響的な個性を保ちながら、イントネーションにも微調整が加えられました。
目指したのは、奏者が音程を補正し続ける負担を抑え、さまざまな演奏環境において、より確かなピッチを得られることです。
“Divine”がこれまで追求してきた音程精度を受け継ぎながら、その信頼性と安定性をさらに高めています。
B♭管とA管、それぞれの響きに合わせたバレル
リニューアルされた“Divine”では、B♭管用バレルに新しい内径設計を採用しました。
A管用バレルは従来の内径設計を維持し、B♭管とA管それぞれの特性に合わせて、響きと音程のバランスが整えられています。
バレル裏面にはB♭/Aの識別刻印が入り、それぞれの楽器に対応するバレルを容易に確認できます。
新しい上下管接合部
2026年モデルでは、従来の特殊合成ポリマーに代わり、天然コルクとOリングを組み合わせた新しい接合構造を採用しました。
この構造は、
・より容易な組み立て
・接合部の密閉性
・機械的な安定性
・上管をわずかに抜いた状態での一体感
に配慮したものです。
チューニングのために接合部を調整した際にも、奏者が楽器の状態を気にしすぎることなく、演奏に集中できる安定性を目指しています。
新しいキーワーク
“Divine”専用キーワークの基本思想を受け継ぎながら、奏者の手に直接触れる部分の形状がさらに見直されました。
・指先へのフィット感を高めた新しいリング形状
・再設計されたスパチュラ
・より素早い動作に対応するためのアーム形状の変更
・指かけの変更
リングとスパチュラは、指先により自然にフィットするよう形状を再設計。指かけも変更されました。
キーワーク全体を通して、奏者の指の動きにより素早く、自然に応える操作性が追求されています。
ルイ14世様式の華やかなデザイン
外観には、17世紀フランス・ルイ14世時代の華麗な美意識を表現した“Grand Siècle”(グラン・シエクル)仕上げを採用。“Légende”や“BC XXI”にも通じる意匠です。
金メッキを施したキーポストが、グレナディラ材の深みのある木の質感と調和し、“Divine”に新たな華やかさを与えています。
一方、“Divine”を象徴するカーボンファイバー製リングは継承。軽量性と重量バランスを保ちながら、現代的で洗練された外観を形づくっています。
ロゴと刻印には新しいレーザー技術を採用し、より明瞭で、美しさが長く保たれる仕上げとなりました。
音色と演奏特性
“Divine”は、RC系統の丸みある音色と厚みを基盤としながら、倍音の豊かさ、音域間の均質性、イントネーションの信頼性を高い水準で統合したモデルです。
2026年のリニューアルでも、この音響的なアイデンティティは変わっていません。
新しいベル内部設計と音響バランス全体の最適化によって、レスポンスはより自然になり、音域を移動した際のつながりとコントロール性がさらに高められています。
主な演奏特性:
・丸みのある柔らかな音色
・倍音豊かな響き
・より自然で素早いレスポンス
・確実な発音とアーティキュレーション
・安定したピッチ
・音域間の均質性と滑らかなつながり
・自然な操作性と演奏時の安定感
“Divine”らしい音の豊かさを保ちながら、より自然に、より確実に、より自由に。
今回のリニューアルは、奏者の意図に楽器がより自然に応える状態を追求した進化です。
【YouTube動画】
チャンネル:ポール・メイエ トピック
動画タイトル:2/3 Adagio – Louis Spohr Clarinet Concerto No.1 Op.26
ポール・メイエが〈ビュッフェ・クランポン〉“Divine”プロトタイプで演奏した記録。
系統内での位置づけ
“Divine”は、RC系統の設計思想を継承しながら、現代の技術的成果を統合して完成された最上位モデルです。
R13系統における“Tosca”と同様に、“Divine”はRC系統の頂点に位置づけられます。
RC系統は、均質で包容力のある音色と、滑らかな音の連なりを特長として発展してきました。その流れの中で“Divine”は、従来のRC系の美質を基盤としつつ、現代の演奏家が求める精度と安定性を総合的に高めることを目的として開発されています。
・“RC”:均整と厚み
・“Prestige”:粒立ちと洗練
・“Divine”:音響思想を磨き上げたフラッグシップ
ソプラノクラリネット内径設計の系統図
→ ソプラノクラリネットの各設計系統の全体像については、以下の特集ページをご参照ください。: 内径系統の比較記事
“Divine”はRC系統のフラッグシップ、“Tosca”はR13系統のフラッグシップです。両機種は同じ〈ビュッフェ・クランポン〉の最高峰に位置づけられながら、出自となる内径設計と音響思想が異なります。
- “Divine”:RC系内径を基盤に、音程整合性の再検証を最優先として再設計
- “Tosca”:R13系内径を基盤に、遠達性と音程均整の高度化を追求
仕様(B♭)
・ピッチ:440/442Hz
・管体:アフリカ産最上質グレナディラ材
・内径:RC系ポリシリンドリカルボア
・上管:一部のトーンホールにグリーンライン素材を採用
・接合部:天然コルクとOリングによる新構造(2026年モデル)
・補強リング:カーボンファイバー製
・ベル:新内径(2026年モデル)
・バレル:B♭管用新内径設計、B♭/A識別刻印(2026年モデル)
・キーワーク:19キー、6リング、銀めっき、E♭レバー
・補助キー:Low Fキー装備
・指かけ:調整可能な新設計指かけ(2026年モデル)
・パッド:GORE-TEXパッド、レザーパッド、コルクパッド
・付属ケース:専用仕様ケース
(詳細仕様はブランド公式サイトの製品情報をご確認ください。)
まとめ
“Divine”は、RC系統の音響思想を基盤に、丸みのある音色、倍音豊かな響き、音程精度、音域間の均質性を高い水準で統合したフラッグシップモデルです。
2026年のリニューアルでは、その基本的な内径設計と音響的な個性を受け継ぎながら、より即時性の高いレスポンス、安定した音程、音域間の均質性を実現。発音とアーティキュレーション、キーワークの操作性、接合部の安定性もさらに高められました。
“Divine”らしい響きを継承。
より自然に、より確実に、より自由に。
ルイ14世様式の華やかなデザイン。
RC系統の丸みある音色と倍音豊かな響きを愛する奏者に加え、より自然なレスポンスと高い精度、安定性を求める奏者へ。2026年の進化によって、“Divine”はその魅力をより幅広い奏者に開いた、RC系統の一つの到達点となりました。
関連モデルとして、〈ビュッフェ・クランポン〉の“Légende”“BCXXI”など、同シリーズのクラリネットも今後順次ご紹介していきます。
執筆・構成:ビュッフェ・クランポン・ジャパン
出典:ビュッフェ・クランポン社内アーカイブ(開発者対談/年史/製品資料等)、公式製品ページ
参考:当サイト掲載インタビュー・イベント記事 ほか
注記:本記事は社内アーカイブに基づく一次情報を中心に構成しています。
関連情報|〈ビュッフェ・クランポン〉のクラリネットは、ビュッフェ・クランポン・ジャパンの「クラリネットショールーム」または全国の公認特約店にてご試奏いただけます。