この記事をシェアする
  • Facebook
  • X
  • LINE
Fabien Wallerand

音楽を生み出す楽器とは

第1回では、オーケストラの中で低音が担う役割を、第2回では、音を生み育てる空気と身体、そして具体的な練習を、第3回では、若い奏者に必要な身体の開き方と、自分の耳で聴くことの大切さを伺いました。

全4回でお届けするインタビューの最終回では、ワルラン氏が楽器に求めるものに焦点を当てます。美しい音が出るだけでなく、演奏の中で自然に応えてくれる楽器とは何か。しなやかな反応、音程、抵抗感、そして奏者の意図に寄り添う柔軟さ――プロフェッショナルが試奏の中で聴き取るものは、単なる音量や華やかさだけでは測れません。

自身の音のイメージを実現してくれる楽器との出会い、〈メルトン・マイネル・ウェストン〉とのモデル開発、そして今なお心を動かされるテューバの「音と振動」について、ワルラン氏が語りました。

ファビアン・ワルラン インタビュー: 第1回 低音と推進力第2回 空気と音づくり第3回 身体と自分の耳第4回 音楽を生み出す楽器

音のイメージに応えてくれる楽器

楽器そのものについて伺います。試奏の際、単に美しい音が出るだけでなく、「この楽器なら音楽を生み出せる」と感じるのは、どのような瞬間でしょうか。

私にとって、楽器で非常に重要なのは「しなやかな反応」です。私は常に、しなやかに応えてくれる楽器を必要としています。なぜなら、私にとって音楽で大切なのは、バランスだからです。

バランスが取れておらず、しなやかに演奏させてくれない楽器で吹くと、音楽を表現することを妨げられてしまいます。無理に力で押して演奏することになったり、演奏そのものが硬くなってしまったりするからです。私にとって、すべてはバランスの問題です。

そして楽器は、とても個人的なものでもあります。〈メルトン・マイネル・ウェストン〉とともに自分のモデルをつくることができたのは、とても幸運なことでした。既存の基本モデルを出発点にしながら、それを自分にとってより個人的なものにしていく。自分の演奏に合うようにしていく。そうしたことができたからです。

Fabien Wallerand
〈メルトン・マイネル・ウェストン〉Fテューバ“2250 FW TITAN 2”について語るファビアン・ワルラン氏

楽器との関係は、年齢や職業上の状況の変化に応じて変わってきましたか。

はい。楽器選びもそうですし、使用する器材、アクセサリー、マウスピース、ミュートなども変わりました。時間とともに、私は楽器そのものに非常に強い関心を持つようになったからです。

パリ・オペラ座に入ったとき、私は25歳でした。当時はまだ〈メルトン・マイネル・ウェストン〉のテューバを吹いていませんでした。オペラ座でのキャリアの中で、〈メルトン・マイネル・ウェストン〉のテューバに出会ったのです。

初めて試したのは、ワーグナーのオペラを演奏していたときでした。そしてすぐに、「絶対に変えなければならない。今、自分が求めている音はこれだ」と思いました。

どこが違ったのでしょうか。

本当に、音の色が違いました。音色そのものに、その楽器ならではの「手触り」があったのです。

もちろん、オーケストラに何をもたらすかは演奏者自身の問題です。しかし、それを実現するためには、演奏者の求めに応えてくれる楽器が必要です。

私自身、テューバに対して明確な音のイメージを持っています。そのイメージを実際の響きとして実現できるかどうかは、楽器の反応に大きく左右されます。これまで別のブランドの楽器も試してきましたが、同じ金属でできていても、返ってくる感触は楽器によってまったく異なります。

そうした違いは、外から聴いて必ずしもはっきり分かるものではありません。しかし奏者の内側では、音楽をつくるうえで非常に大きな違いとして感じられるのです。

ヴァイオリニストが自分の楽器や弓に対して、身体で非常に強い感覚を持つのと同じです。テューバでも、それはまったく同じです。私のF管テューバ、“2250 FW”は、もう10年近く使っていると思います。世界中をこの楽器とともに旅していますし、オーケストラ、ソロ、室内楽、どんなプロジェクトでも、私はこの楽器にとても満足しています。

若い音楽家が楽器を試奏するとき、何を聴きすぎていて、逆に何を十分に聴けていないことが多いでしょうか。

多くの場合、若い奏者は楽器の「パワー」を聴きすぎています。音量のある楽器、大きな音が出る楽器を求めるのです。
反対に、十分に聴けていないことが多いのは、しなやかさと音程感です。音程は非常に重要です。とてもよく鳴り、反応もしなやかな楽器であっても、実際には音程に課題がある場合があります。そうなると、後から修正するのはとても難しいのです。

ですから、何度でも言いますが、私にとって良い楽器とは、全体のバランスが取れている楽器です。音程のバランス、反応のしなやかさ、適度な抵抗感。そのすべてが重要です。結局のところ、すべてはバランスの問題なのです。

楽器がしなやかに反応してくれるかどうかは、どのように確かめますか。

倍音の練習をします。ごく簡単な、小さな倍音の練習です。それだけで、楽器がしなやかに応えてくれるかどうか、そして音程がどの程度安定しているかを、すぐに感じ取ることができます。

ファビアン・ワルラン氏の愛用する“2250FW TITAN2”

今なお心を動かす、テューバの音と振動

ここまで、音楽を生み出すことのできる楽器の条件について伺ってきました。では、そうした具体的な性能を越えて、テューバという楽器そのもののどのようなところに、今なお心を動かされますか。

音です。音と、振動です。楽器の中で生まれる振動、楽器そのものが震えることに、今でも心を動かされます。
一音を鳴らすと、楽器が震えます。それは、私が初めてこの楽器を試したときに受けた、最初の感覚でもあります。脚の間で感じる、あの振動です。

私は8歳でサクソルンから始めました。そして、早い時期に吹奏楽を始めました。私がいた吹奏楽団に、テューバを吹く女の子がいました。とても大きなその楽器に、私は強く惹かれていました。私が12歳くらいの時、彼女に「君のテューバを吹いてみてもいい?」と聞きました。彼女は「もちろん。吹いてみて」と言って、楽器を私の脚の上に置いてくれました。

私は一音吹きました。ファの音です。そのときの振動を、今でも覚えています。
「これは魔法だ。震える。すごい!」と思いました。
その感覚は、今でも私の心を動かしています。

ありがとうございました。

ファビアン・ワルラン インタビュー: 第1回 低音と推進力第2回 空気と音づくり第3回 身体と自分の耳第4回 音楽を生み出す楽器

テューバでフランスと世界をつなぐ
Read more
F.ワルラン氏 & 大塚哲也氏 & 池田正太 – 対談
Read more
この記事をシェアする
  • Facebook
  • X
  • LINE
Page Up