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Fabien Wallerand

音は、空気から始まる

パリ・オペラ座管弦楽団のテューバ奏者、ファビアン・ワルラン氏へのインタビューを、全4回でお届けしています。
第1回では、オーケストラの中でテューバが担う役割と、低音が音楽を前へ進める力について伺いました。第2回では、音を支える根本としての「息」に焦点を当てます。
テューバにとって有効な息とは、単に多くの空気を使うことではありません。どのように吸い、どのような速度で空気を流し、身体全体をどのように整えるのか。その一つひとつが、音色、アーティキュレーション、そして音楽の方向感に深く関わっています。
ワルラン氏は、インタビューと実演を通して、呼吸、姿勢、舌の位置、sons filés、ペダルトーンからの練習など、音を育てるための具体的な考え方を語ってくれました。

テューバにとって、本当に有効な息とは

ファビアン・ワルラン インタビュー 2026: 第1回 低音と推進力第2回 空気と音づくり第3回 身体と自分の耳第4回 音楽を生み出す楽器

金管楽器では「息」という言葉がよく使われます。ただ、その中には、息の量、吸い方、吐き方、空気の速度など、さまざまな要素が含まれていると思います。テューバにとって、本当に有効な息とは、どのようなものなのでしょうか。

とても大きな問いですね。息、つまり空気は、私たちの楽器の根本です。

残念ながら、これはフランスだけでなく世界中に言えることですが、若い奏者が学び始める段階で、教師が呼吸や息の取り方について十分に語っていないと感じます。そのため、彼らが思春期を迎える頃になってから、改めてそこを教え直さなければならないことが多いのです。

人によっては、空気の重要性を一から理解してもらう必要があります。空気とは、単に量の問題ではありません。どのように吸い、どのように吐くのか。どれだけの量を使うのか。そして、どのような速度で空気を流すのか。特に空気の速度については、あまり語られませんが、楽器がどのように機能するか、振動がどのように生まれるかを理解するうえで非常に重要です。

楽器の話をする以前に、まず振動の話をする必要があります。多くの人は、振動とは唇によって起こるものだと考えています。もちろんそれは正しいのですが、その前に空気があります。空気こそが、私たちの楽器の基礎です。空気がなければ、振動は生まれません。

私は学生に、フランス語の respirer、つまり「呼吸する」と、aspirer、「吸い込む」という二つの言葉の違いについてよく話します。学生に「息をして、息をして」と言うと、「はい、息をしています」と返ってきます。しかし彼らは、必要な空気量や、どのような速度で空気を取り込む必要があるのかを、必ずしもつかめていません。

そこで私は、aspirer、つまり「吸い込む」という言葉を使います。これは、単に自然に呼吸する respirer よりも、より強い動作です。より多くの空気を取り込むための、もう一段強い働きかけなのです。

もちろん、実際には演奏する内容に応じて呼吸を変えなければなりません。いつも同じように息を吸うことはできません。しかし、テューバの管をまっすぐ伸ばせば、一般に6メートル、7メートル、8メートルにもなるような長い楽器に息を吹き込むのです。だからこそ、空気、呼吸、息は、根本的に重要なのです。

つまり、若い時期から呼吸について意識しておくことが大切なのでしょうか。

もちろん、7歳や8歳の子どもにこういう話をするのは簡単ではありません。そこまで注意深く集中して聞くことは難しいでしょうし、本人はまず楽器を吹きたいわけです。

ただ、若い人に呼吸の話をすべきタイミングを、私たちはもっと意識的に考える必要があると思います。自然にある程度うまく呼吸できる人もいますが、非常に悪い呼吸習慣を持っていて、それが大きな問題につながっている人もいます。そしてその問題を、彼らがたとえばパリ国立高等音楽院に来てから、あるいはドイツの音楽大学に進んでから、日本の高等教育機関に入ってから、修正しなければならなくなるのです。

教師がもう少し早い段階から呼吸について語っていれば、そうした問題は少し減るのではないかと思います。

ファビアン・ワルラン
パリ・オペラ座管弦楽団テューバ奏者、ファビアン・ワルラン氏。2026年5月、ソリストとしての公演とテューバアカデミーのために来日し、息、身体、音づくりについて語った。

身体と心を整えることも、演奏の一部

テューバは身体を大きく使う楽器です。年齢や経験を重ねる中で、楽器との身体的な関係は変わってきましたか。

はい、変わってきました。私は今、以前よりかなりスポーツをするようになりましたし、その違いを実際に感じています。

21年前にオペラ座に入った頃は、今より体格も大きく、体重もありました。年齢を重ねると、持久力も変わります。身体的な持久力だけでなく、移動への耐性や、疲労の出方も変わってきます。

だから今は、良いコンディションを保つために、たくさん運動をしています。特に、目標となる本番があるときにはなおさらです。先週はフランス南部でピアノとのリサイタルを演奏しましたし、今回の日本滞在でもアカデミーがあり、明日はここで、シンフォニックウインズ東京とソリストとして演奏します。私にとって、そうした公演には身体的な準備も必要なのです。

テューバは身体的な楽器です。そして同時に、心理的な要素も非常に大きい楽器だと思います。スポーツをすると気分が良くなるという意味でも、身体と心はつながっています。ですから、時間の経過は身体に確かに影響し、それは演奏にも影響を与えます。

今年1月、パリ・オペラ座でワーグナーの《ジークフリート》を演奏しました。私にとって最も重要なレパートリーの一つで、非常に大きなテューバのソロがあります。私はそのために、本当にたくさん運動しました。冬で寒かったのですが、水泳をたくさんし、ランニングもしました。最高の状態で臨むためです。

ワーグナーには、低音域で非常に長いフレーズがあり、長大なクレッシェンドなど多くの表現が求められます。大量の息が必要であると同時に、自分自身を制御する力も要ります。大きなソロがあると、当然ストレスもかかります。パリ・オペラ座では、夜にほぼ3000人のお客様の前で演奏するわけです。

けれど、その緊張がテューバの音に表れてはいけません。だからこそ、身体も心も良い状態に整えるための準備が必要なのです。

以前は、本番前の身体的、精神的な準備を、今ほど大切に考えていませんでした。オペラ座に来て、ウォームアップをして、もちろん必要な準備はしていました。ただ、身体と心を整えることに、今ほど大きな比重を置いてはいなかったのです。

今は、以前より多く運動しています。身体がそれを必要としているからなのかは分かりませんが、少なくとも自分にとって非常に良い効果があると感じています。実際、《ジークフリート》は8回演奏しましたが、自分の演奏にはかなり満足できました。指揮者もわざわざ褒めに来てくれました。自分でも、良い状態で演奏できたと思います。

運動をすることは、やはり助けになります。アスリートと同じです。

音を変えたいとき、最初に変えるのは空気

音を変えたいとき、最初に変えるべきものは何でしょうか。空気、息の支え、アーティキュレーション、内的な聴取、あるいは音楽的な意図でしょうか。

音を変えるために最初に変えるべきものは、空気です。空気こそが基礎です。

空気によって、実に多くのことを変えることができます。音程さえ変化します。アーティキュレーションも、もちろん舌を使って変えるものですが、その前にまず空気があります。空気が、すべての土台なのです。

アーティキュレーションを変えたいなら、吹き方、つまり呼吸のあり方を変えなければなりません。少し明るい音色にしたい、あるいは少し暗い音色にしたいなら、空気の速度を変える必要があります。強く吹くときと、ピアニッシモで吹くときでは、同じように息を吸うことはできません。ですから、すべての根本にあるのは空気であり、呼吸なのです。

レッスンやマスタークラスでは、若い奏者が吹き始めて2小節ほどで止めることがよくあります。そして、こう言います。「ごめん、今、息を吸っていなかったよね。どうやって吸ったの? 変だよ。今からピアノのフレーズを吹くのに、フォルテのフレーズを吹くような吸い方をしている。あるいは逆に、フォルテのフレーズなのに、ピアノを吹くような吸い方をしている。どうしてそうなるのか分からない」と。

最近では、学生たちも呼吸の「質」の重要性を理解するようになってきています。これは本当に大切なことです。

テューバを歌わせるアーティキュレーション

ワルランさんの演奏において、アーティキュレーションは、楽器を歌わせるためにどのような役割を担っていますか。

フランスでは、アーティキュレーションについて非常によく語ります。フランス音楽そのものが、もちろん作曲家によって違いはありますが、アーティキュレーションをとても大切にしているからです。たとえばベルリオーズやビゼーの音楽では、アーティキュレーションが非常に明瞭です。

一方で、ドビュッシーやラヴェルはかなり異なります。ただ、テューバのレパートリーで言えば、たとえばボザの協奏曲は、アーティキュレーションがきわめて重要な音楽です。

ですから、どのようにアーティキュレーションするかによって、テューバをどう歌わせるかは確実に変わります。

先週、日本で行ったアカデミーのレッスンでも、私は何度もアーティキュレーションについて話していたと言われました。参加者の若いテューバ奏者たちは本当に良い演奏をしていました。水準は非常に高かったです。

ただ、中にはアーティキュレーションの質の重要性を十分に自覚していない人もいました。そのため、ときどき音の出だしに不安定さがあったり、少し遅れたり、音楽的に方向感が出ず、少し平板に聞こえたりすることがありました。アーティキュレーションを常にきちんとコントロールできているわけではなかったからです。

自分の音に満足できないとき、どこから見直すのか

学生が自分の音に満足していないとき、どこから取り組み始めますか。

まずは姿勢です。姿勢と呼吸から始めます。

その後、マウスピースだけで吹いてもらうこともよくあります。マウスピースの使い方を確認し、舌の位置についても取り組みます。

まだお話ししていませんでしたが、舌の位置は、音の質や音色に非常に強い影響を与えます。ですから、口の中で舌を動かしたり、喉を開いたりする練習を行い、音を少しずつ解放していきます。

舌の位置が音色に影響するとは、具体的にはどのようなことでしょうか。

楽器を吹きながら行う練習として、一つの音を伸ばし、その中で舌だけを使って音を少し閉じたり、開いたりするものがあります。舌を上げたり下げたりするだけで、音色の違いが聴こえます。「オイ、オイ」というような変化です。

フランス語には、A、O、Iといった母音があります。たとえば「オイ、オイ」と発音するとき、閉じた音は、OよりもIに近くなります。これは舌の位置によるものです。

私は通常、この練習を学生にさせます。しかし多くの人は、舌をうまく動かせません。舌がある位置に固定されていて、自由に動かないのです。そこで、「オイ、オイ、オイ」と舌を動かしながら、音の違いを聴くよう促します。舌の位置がどれほど重要かを自覚してもらうためです。

この練習を重ねるほど、舌を下げて音を開く感覚が育っていきます。

〖動画〗舌の位置による音色の変化

一音を長く保ち、音を育てる ― sons filés

音を育てるうえで、とりわけ有効だと感じている練習はありますか。

はい。音のための練習はいくつもありますが、私にとって特に良いと思うものが二つあります。

一つ目は、フランス語で sons filés と呼ばれる練習です。一つの音を長く保ちながら、クレッシェンドし、そこからディミヌエンドしていく。それを全音域で行います。

一人で練習していると、とても退屈に感じられるかもしれません。長く感じますし、一音を保ち続けること自体が非常に難しいからです。

どのくらい長く保つことを目指すのでしょうか。

目標は、できるだけ長く続けることです。ただし、それ以上に大切なのは、クレッシェンドとディミヌエンドの中で、音をきちんとコントロールすることです。

言葉で言うのは簡単ですが、実際には簡単ではありません。クレッシェンドの途中で音が不均一に揺れないように保ち、そこからディミヌエンドし、最後に空気を自然に抜いていく必要があります。

これを全音域でできるようにすることが重要です。たとえば、最も楽に鳴らせる音で行うと、こんな感じです。

〖動画〗sons filés の実演

目的は、クレッシェンドとディミヌエンドの間に音色が変わらないよう、音をしっかり制御することです。今、最後に少し音色が変わりましたね。「オイ」と少し聴こえたでしょう。そこで音が逃げてしまいました。

空気をとてもゆっくりと抜いていきます。今のは一音での例です。これを全音域の各音で行うのが良いです。非常に時間がかかります。

さらに、二音で行うこともできます。つまり、二つ目の音までクレッシェンドし、そこからディミヌエンドする。たとえば、こうです。

〖動画〗二音による sons filés の実演

そして最後は、音が消えていくように終わらせます。イタリア語では morendo と言います。

この練習を全音域で行うことが目標です。非常に長い練習になります。しかし、繰り返せば繰り返すほど、自分の音をよく聴くようになります。クレッシェンドとディミヌエンドの中で、自分が音をどのように組み立てているのかを聴き取れるようになるのです。

目指すのは、フォルテで吹いたときにも攻撃的にならず、気品のある音質を保ったまま、できるところまで音を広げていくことです。この練習を重ねるほど、音は育っていきます。ここで言う「育つ」とは、単に大きな音が出るようになるという意味ではありません。音の豊かさが増すということです。

音に含まれる不純物や、制御できていない部分、先ほどの実演のように途中で音色が変わってしまう箇所にも気づけるようになります。繰り返すことで、よりコントロールできるようになり、音も育っていきます。

私はこの sons filés の練習がとても好きです。これは、最初の先生が私にやらせていた練習でした。私は8歳で、それが大嫌いでした。

それが今では、ご自身の学生にも伝えている練習になったのですね。

そうです。結局、今では自分の学生にもやらせています。とても面白いものです。

低音から全身を整える、ゆっくりした練習

もう一つの練習は、どのようなものですか。

もう一つは、非常にゆっくりしたインターバルの練習です。ペダルトーン、つまり非常に低い音から出発し、半音階で上がっていきます。できるだけゆっくり、できるだけなめらかにつなげて演奏します。

この練習では、姿勢、アンブシュア全体、そして唇まわりの使い方に大きく働きかけることになります。また、とても多くの息が必要です。私が大きく息を吸っているのが分かると思います。この練習を成立させるためには、それだけの空気が必要なのです。

〖動画〗ペダルトーンからのゆっくりしたインターバル練習

このような練習を通して、音だけでなく、身体全体の使い方も整えていきます。低音から始め、時間をかけて音をつなげていくことで、息、姿勢、アンブシュア、そして耳を少しずつ結びつけていくのです。

つづく|第3回「身体と自分の耳」
テューバ奏者ファビアン・ワルラン氏が、若い奏者に必要な身体の開き方、自分の耳で聴くこと、そして音楽家として自立するための姿勢を語ります。

ファビアン・ワルラン インタビュー 2026: 第1回 低音と推進力第2回 空気と音づくり第3回 身体と自分の耳第4回 音楽を生み出す楽器

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