ビュッフェ・クランポン Divine 徹底解説|RC系統の思想を再構築したフラッグシップ | Buffet Crampon
クラリネット深掘り特集・第7回
“Divine”とは ― RC系統のフラッグシップとして再構築された設計
〈ビュッフェ・クランポン〉“Divine”は、RC系クラリネットを基盤に、新たな音響研究と構造再設計を経て完成したモデルです。RC系統の到達点として位置づけられます。
R13系統が明瞭さと遠達性を軸に発展し、RC系統が均整と厚みを核として発展してきたのに対し、“Divine”はRC系統のボア思想を基盤に、音程整合性の再検証を最優先課題として再設計されました。
本機種は、ポール・メイエを中心とする研究プロジェクトの成果として誕生しました。その開発は約5〜6年にわたり、国際的奏者と技術者による継続的検証を経て完成に至っています。
- RC系統のフラッグシップ
- 約5〜6年にわたる国際的検証プロジェクト
- 音域全体の音程整合性を大幅に改善
- カーボンファイバー製リングによる軽量化(約60g)
- Low Fキー装備
- 上管要所にグリーンライン挿入
- 新設計キーワーク/新スパチュラ
- 合成ポリマー製ジョイント素材採用
“Divine”は〈ビュッフェ・クランポン〉クラリネットショールームにてご試奏いただけます。
ショールームのご案内
RC系統の設計思想については、こちらの記事で詳しく解説しています。RC深掘り記事
開発背景 ― 5〜6年にわたる音響研究プロジェクト
“Divine”は、特定奏者に限定したモデルではなく、国際的奏者による多角的検証を経て完成しました。このプロジェクトの中心となったポール・メイエは、次のように語っています。
「特定の一人のための楽器ではなく、国際的な視点から検証された楽器を目指しました。
設計の中心にあったのは、あらゆる状況でのイントネーションの信頼性です。」
そのため、ミシェル・アリニョン、パスカル・モラゲス、ニコラ・バルディルーをはじめ、世界各国の主要オーケストラ奏者が開発段階で試奏に参加し、各段階で意見が反映されました。開発にあたっては、RC系特有の丸みある音色を保ちながら、ブランドの基準機となったR13系統のフラッグシップ“Tosca”に匹敵するイントネーションと音程精度の実現が目標とされました。その結果、“Divine”はRC系統の音響的個性を維持しつつ、現代の高度な要求に応える均質性と柔軟性をあわせ持つモデルとして完成しています
→ R13系フラッグシップ“Tosca”については、別記事で詳述しています。:Tosca深掘り記事
設計の核心
1. Tosca音孔配列の採用(RC系内径との融合)
“Divine”は、R13系統フラッグシップ“Tosca”の音孔配列を採用しています。
これにより:
・全音域での音程整合性の向上
・音域間移行の滑らかさ
・過酷な演奏条件下での発音安定
が実現されています。
ただし、内径構造はRC系統を基盤としています。
すなわち、RC系の広めの内径に、Toscaの音孔設計を統合する再設計が行われました。
これは単なる仕様転用ではなく、複数回の試作と検証を経て整合が図られた結果です。
2. 内径設計の再検証
RC系統はR13系統よりも広めのポリシリンドリカル内径を持ちます。
“Divine”ではこの内径思想を維持しながら、音孔配置との整合性を再構築。
結果として:
・音域間の均質化
・音程の安定
・応答性の向上
が全体設計として統合されています。
3. カーボンファイバー製リング(特許技術)
従来の金属リングを廃し、カーボンファイバー製リングを採用。
・約60gの軽量化
・重量バランスの最適化
軽量化とともに、木材本来の振動特性を活かす方向で設計されています。
4. グリーンライン挿入(上管要所)
A♭トリル孔、トリルキー孔、シャルモーキー孔など、応力が集中しやすい箇所にグリーンライン素材を挿入。
これにより:
・微細な亀裂による気密低下の防止
・タンポ下への亀裂進行抑制
・演奏中の気密安定
が図られています。
5. 合成ポリマー製ジョイント素材
従来の天然コルクに代わり、圧縮しにくい合成ポリマー素材を採用。
・経年劣化による圧縮防止
・接合部の気密安定
演奏時の気密保持に直接寄与します。
6. キーワークと人間工学
・新設計キーワーク
・新スパチュラ
・LowFキー装備
サイズ差のある奏者の手にも配慮し、演奏安定性と超絶技巧への対応を両立。
発売当時に公開された開発責任者、テスターによる説明動画
【YouTube動画】
チャンネル:Buffet Crampon Official (Paris)
動画タイトル:Paul Meyer & Éric Baret – Divine Development
ポール・メイエとエリック・バレが“Divine”の開発思想と技術的特徴について語る記録。
音色と演奏特性
“Divine”はRC系統の丸みと厚みを基盤としながら、音程整合性を最優先に統合したモデルです。
特徴:
・倍音の豊かさ
・音域間の均質性
・応答性の高さ
・音程の安定
音の密度と透明性の両立を志向した設計です。
ポール・メイエはインタビューで、「楽器がこちらに何かを強いるのではなく、音楽の要求に即座に応答する状態を目指した」と語っています。その言葉が示すように、“Divine”の特性は単なる倍音の豊かさや音量の増大ではなく、奏者の意図と響きの一致精度を高める方向に設計されています。
【YouTube動画】
チャンネル:ポール・メイエ トピック
動画タイトル:2/3 Adagio – Louis Spohr Clarinet Concerto No.1 Op.26
ポール・メイエが〈ビュッフェ・クランポン〉“Divine”プロトタイプで演奏した記録。
系統内での位置づけ
“Divine”は、RC系統の設計思想を継承しながら、現代の技術的成果を統合して完成された最上位モデルです。
R13系統における“Tosca”と同様に、“Divine”はRC系統の頂点に位置づけられます。
RC系統は、均質で包容力のある音色と、滑らかな音の連なりを特長として発展してきました。その流れの中で“Divine”は、従来のRC系の美質を基盤としつつ、音程精度、発音の確実性、音の均一性といった現代の演奏家が求める要素を総合的に高めることを目的として開発されています。
・“RC”:均整と厚み
・“Prestige”:粒立ちと洗練
・“Divine”:音響再設計による最上位モデル
「楽器は音色だけでなく、音楽文化を運ぶ存在である。」
― ミシェル・アリニョン(テスター)
ソプラノクラリネット内径設計の系統図
→ ソプラノクラリネットの各設計系統の全体像については、以下の特集ページをご参照ください。: 内径系統の比較記事
“Divine”はRC系統のフラッグシップ、“Tosca”はR13系統のフラッグシップです。両機種は同じ〈ビュッフェ・クランポン〉の最高峰に位置づけられながら、出自となる内径設計と音響思想が異なります。
- “Divine”:RC系内径を基盤に、音程整合性の再検証を最優先として再設計
- “Tosca”:R13系内径を基盤に、遠達性と音程均整の高度化を追求
仕様(B♭)
・ピッチ:440/442Hz
・管体:アフリカ産最上級グレナディラ、上管一部のトーンホールに“グリーンライン”
・キー:洋銀・銀めっき(精密特殊加工スチール針ばね・板ばね)、“Divine”専用キーデザイン
・補助キー:E♭/A♭レバー(下管左手小指)、Low Fコレクションキー
・接合部リング:カーボンファイバー
・ベル:リングなし新設計ベル(B♭/A共通)
・パッド:GORE-TEX
・付属:バレル2本(in B♭=65/66mm、in A=64/65mm)
・ケース:“Tosca”専用HIGHTECH仕様ケース/専用ケースカバー(ショルダーストラップ付)
(詳細仕様は公式資料準拠)
まとめ
“Divine”は、RC系統の音響思想を基盤に、音程整合性を最優先課題として再設計された最上位機種です。約5〜6年にわたる国際的検証を経て、Toscaの音孔配列とRC系ボアを融合。カーボンファイバー製リングやグリーンライン挿入などの構造革新を通じて、音域全体の安定と応答性を高い水準で統合しました。それは単なる上位仕様ではなく、音程に妥協しない現場のための設計といえます。
オーケストラ、室内楽、独奏 ―― あらゆる状況で精度と信頼性を求める奏者に向けたモデルです。
RC系統の音色観を愛しつつ、音程精度と構造安定性を最高水準で求める奏者にとって、“Divine”は一つの到達点となるでしょう。
関連モデルとして、〈ビュッフェ・クランポン〉の“Légende”“BCXXI”など、同シリーズのクラリネットも今後順次ご紹介していきます。
執筆・構成:ビュッフェ・クランポン・ジャパン
出典:ビュッフェ・クランポン社内アーカイブ(開発者対談/年史/製品資料等)、公式製品ページ
参考:当サイト掲載インタビュー・イベント記事 ほか
注記:本記事は社内アーカイブに基づく一次情報を中心に構成しています。
関連情報|〈ビュッフェ・クランポン〉のクラリネットは、ビュッフェ・クランポン・ジャパンの「クラリネットショールーム」または全国の公認特約店にてご試奏いただけます。