
フローラン・エオー氏に聞く、新バレル“ロンド”誕生の背景
話題の新製品“ロンド”バレルについて、フローラン・エオー氏にお話を伺いました。名前の由来や開発背景、そして演奏面での魅力について、じっくりお話しいただきました。(取材・執筆:井上朋実、2025年春)
今日はよろしくお願いいたします。さっそくですが、“ロンド”という名前にはどのような意味が込められているのでしょうか?
エオー(敬称略):“ロンド(RONDO)”という名前には、音楽的な要素と視覚的なイメージ、その両方の意味が込められています。まず、「ロンド形式」は音楽用語のひとつで、いくつかの異なるメロディのあいだに、同じ主題が何度も戻ってくる音楽の構成です。モーツァルトのクラリネット協奏曲の第3楽章などにも見られます。
さらに、フランス語の rond(ロン)には「丸い」という意味があります。今回のバレルは、外側の下部がやわらかく丸みを帯びたフォルムになっており、見た目の印象とも非常に調和しています。こうした理由から、“ロンド”という名前が自然と導き出されました。
音楽用語と形状の両方を掛け合わせたネーミングなのですね。ネーミングにも遊び心が感じられて素敵です。
エオー:ありがとうございます。開発チーム内でも「名前から形状がイメージできるし、音楽的な響きもあっていいね」と好評で、自然とこの名前に決まりました。
今回のバレルはどのような背景から誕生したのでしょうか?
エオー:近年、ビュッフェ・クランポンではドイツ式クラリネット、そしてウィーン式クラリネットの開発に力を注いでいます。フランスのメーカーであるビュッフェ・クランポンが、本格的にドイツ式クラリネットに取り組むというのは、まさに時代の流れを感じる出来事ですね。
ドイツ式クラリネットでは、バレルの下部に特徴的な丸みを持たせたデザインが多く見られます。私たちはその形状に着目し、「このフォルムをフランス式クラリネット用のアクセサリーとして活かせないか?」という発想から、“ロンド”の開発がスタートしました。
バレルの内径は“Festival”と同じく、まっすぐな円柱形を保ちながら、外側の下部にやわらかな丸みを加えたデザインとなっています。
フランス式クラリネットにドイツ・ウィーン式クラリネットの要素を取り入れているんですね。吹奏感にも変化はあるのでしょうか?
エオー:明確な違いがあります。特に発音がより正確になるということが大きな効果だと思います。他にもバレルの下部が分厚くなっていることにより、音の密度が高くなり、音色がより柔らかく、色彩豊かになります。
ビュッフェ・クランポンの他のテスターとも試奏をしましたが皆この新しいバレルを好んでいます。
また、“ロンド”は“ICON(アイコン)”バレルと同様に、どのモデルのクラリネットにもアクセサリーとして合わせてご使用いただける汎用性の高さも魅力のひとつです。
最後に、クラリネット奏者の皆さまへメッセージをお願いいたします。
エオー:“ロンド”は、伝統的なクラリネットの美しさと、現代的な感性をつなぐバレルです。
演奏表現に新しいインスピレーションをもたらすことと思いますので、ぜひ一度お試しいただけたら嬉しいです。

均一性と響きの豊かさが特長の新製品バレル“RONDO”。63mm、64mm、65mm、66mm、67mmの5サイズ、グレナディラ製、モパネ製、グリーンライン製の3種類の木材で展開されている。価格は 30,800円~33,000円(税込、2025年6月3日現在)。全国のビュッフェ・クランポン公認特約店で予約受付中。