ビュッフェ・クランポン RC 徹底解説|丸みと厚みのあるエレガントな音色 | Buffet Crampon
クラリネット深掘り特集・第2回
“RC”とは ― 〈ビュッフェ・クランポン〉の“R13”と並ぶもう一つの基軸設計
〈ビュッフェ・クランポン〉(Buffet Crampon)の クラリネット “RC” は、1975年に誕生したプロフェッショナル・モデル。”R13″ が明瞭さと遠達性(=音の飛び・音の通り)を基軸とするのに対し、“RC” は丸みと厚み、均整(音程の整い・音の粒立ちの揃い)を核とした別系統の設計思想で評価され、発売以来「クラリネットの中のクラリネット」と称されてきました。
2014年のリニューアルでは、バレル2本付属、”RC”ロゴのメタルプレート刷新、高品質レザーパッドの採用、フラット底ベルへの改良などを実施。総じて、”R13″ との対比では“フランス的な響き”の豊かさを体感でき、室内楽からオーケストラまで舞台で持ち味を発揮しやすい一本です。
設計思想の対比:
“R13″:明瞭さ・遠達性・芯の強さ
“RC”:均整・厚み・倍音の豊かさ
- 1975年誕生/丸み・厚み・均一性の“フランス音色”
- 2014年改良:パッド/ベル形状/バレル(B♭65/66mm・A64/65mm)
- 適性:室内楽〜オーケストラで響きのまとまりと通り
- 系統:RC(Prestige/Divineへ連なる)
“RC” 誕生の背景 — ヨーロッパの響きを求めて
1955年に誕生したR13はアメリカ市場で大成功を収めましたが、1970年代のヨーロッパのオーケストラ文化では別のニーズがありました。
・小編成のオーケストラ
・大きすぎないホール空間
・暗めで柔らかな音色を重視する奏法
こうした背景を受けて工場長ロベール・カレが設計を手がけ、テスターのジャック・ランスロが協力。ブランド創立150周年の節目である1975年に“RC”が完成しました。
開発者ロベール・カレと“RC”の由来
“RC”というモデル名は、設計者ロベール・カレ(Robert Carrée)の頭文字に由来します。彼はR13の開発でも中心的役割を担いましたが、“RC”においては「異なる音色美学を持つもう一つの基軸モデル」を目指しました。
カレは次のような課題に挑戦しました。
・”R13″ に比べてより広めのポリシリンドリカル内径(段階的に変化する内径構造)
・全音域における均一な音程
・倍音を豊かにしながらも、深みと温かみを持つ音色
・人間工学を意識した堅牢なキーワーク
・割れにくい管体と耐久性の強化
「 “RC”の誕生によって、プロフェッショナルモデルの品質において飛躍的な進化を遂げた。」
― モーリス・ヴァレ(元職人、回想より)
設計の特徴 — “クラリネットの中のクラリネット”
“RC”の設計は、“R13”と明確に異なる方向性を持っています。
内径:“R13”より広めのポリシリンドリカル。
音色:まろやかで温かみのある響き。柔らかく暗めのトーンを志向。
音程:開放G~ネックB♭付近で音程が上ずらない安定性。
バランス:全音域の均整が取れており、吹奏感が滑らか。
このバランスの良さから、発売当初から「クラリネットの中のクラリネット」と激賞されました。
2014年のリニューアル — メタルプレート/レザーパッド/ベル底部/2本バレル
さらに“RC”には2014年に大きな改良が加えられました。
・RCロゴ入りメタルプレート:モデル識別と意匠性を向上
・HTフェルト採用のレザーパッド:タンポを最適化
・フラット底部のベル:縁部を平面化し、音色の向上を狙った設計
・付属バレル(B♭ 65/66mm・A 64/65mm):会場やピッチ環境に合わせ微調整が容易
これらの改良は、“RC”の均整・厚みという設計思想をより安定して再現するためのアップデートでした。そのため、従来の魅力はそのままに、耐久性と演奏快適性が向上しました。
“RC”の音色と演奏特性
“RC”は、柔らかく落ち着いた音色と均整の取れた音程を特長とし、室内楽やオーケストラの響きに理想的です。
・豊かな低音域とふくよかな中音域
・音程の均整が保たれた吹奏感
・暖かみのある音色美
設計思想が明確であることから、プロフェッショナルが第一線で選ぶモデルであると同時に、音色形成を学ぶ過程においても一つの基準となり得る存在です。
さらに“RC”は、ヨーロッパを中心に国際的なプロ奏者に広く愛用され、日本国内でもクラシックの第一線、教育現場、吹奏楽の分野に至るまで多彩な舞台で選ばれています。
系統展開 ― “RC”から広がる流れ(Prestige / Divine)
“RC”の成功は、後続機種の開発を大きく後押ししました。現在の〈ビュッフェ・クランポン〉ソプラノクラリネットのラインナップは、R13系、RC系という伝統的な二大基軸に加え、BC20系という現代的設計思想の系統が加わり、次の三系統に分かれます。
・R13系:“R13” → “Festival”→ “Tosca”(明瞭な芯と遠達性、音程設計を基軸に進化)
・RC系:“RC”→“Prestige”→“Divine”(丸みと厚み、均一性を核に発展)
・BC20系:“Tradition”→ “Légende”→“GALA” (新設計思想の流れ)
※ 左から右が開発順
RC系統の機種は以下を特長としています。
“RC”:均整と柔らかさ
“Prestige”:倍音の豊かさと表現力の進化
“Divine”:最新技術を盛り込んだ革新モデル
※ 機種名からブランド公式サイトの製品ページにリンクしています。
ソプラノクラリネット内径設計の系統図
“RC”の仕様(現行モデル)
調子|B♭(A/E♭も展開)
ボア|ポリシリンドリカル(R13より広め)
管体|グレナディラ(※B♭にはグリーンライン製もあり)
キー|洋銀製/冷間鍛造/銀めっき仕上げ
バネ:精密特殊加工スチール
パッド|レザーパッド(HTフェルト)
指かけ:調節可能
バレル|B♭:65/66mm|A:64/65mm
付属ケース|ビニールレザー張りポシェットケース+防水ナイロンカバー
【比較】設計思想と音色傾向の対照 ― “R13”と“RC”:
“R13”が明瞭さと遠達性を基軸に発展してきたのに対し、“RC”は均整と倍音の豊かさを核とする設計思想から生まれました。
いずれも〈ビュッフェ・クランポン〉の伝統的な二大基軸であり、異なる音響美学を体現しています。
R13の設計思想については、こちらをご参照ください。
R13|音色と演奏特性
R13|設計の特徴
まとめ
“RC”は、“R13”とは異なる音響美学から生まれた、もう一つの基軸設計。まろやかで深みのある「フランスの音色」を体現するプロフェッショナルモデルです。
1975年に“R13”の成功を受けて誕生し、ヨーロッパ的な音楽文化に応える設計思想から生まれました。
「クラリネットの中のクラリネット」と称されるほどの均整と音色美は、2014年のリニューアルを経てさらに洗練。現在もプロの舞台から教育現場まで幅広く支持され続けています。
執筆・構成:ビュッフェ・クランポン・ジャパン マーケティングチーム
出典:ビュッフェ・クランポン社内アーカイブ(開発者対談/年史/ 製品資料)、公式製品ページ
参考:当サイト掲載インタビュー・イベント記事 ほか
注記:本記事は社内アーカイブに基づく一次情報を中心に構成しています。
関連モデルとして、〈ビュッフェ・クランポン〉のプロフェッショナルクラリネットを順次ご紹介していきます。
関連情報|〈ビュッフェ・クランポン〉のクラリネットは、ビュッフェ・クランポン・ジャパンの「クラリネットショールーム」または全国の公認特約店にてご試奏いただけます。