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エオー氏に聞く、バレルとベルで広がる音づくり

クラリネットの音色や吹奏感は、楽器本体だけで決まるものではありません。
マウスピース、リード、バレル、ベル。それぞれの小さな違いが、息の入り方、発音、響き、音色の印象に影響を与えることがあります。

では、バレルやベルを選ぶとき、どのような点に耳を向ければよいのでしょうか。

クラリネット奏者フローラン・エオー氏に、バレルとベルの役割、楽器との相性を確かめるための視点、そして“Rondo”と“ICON”バレルの印象について伺いました。

第1章

バレルとベルは、何を変えるのか

まず、バレルとベルには、それぞれどのような役割があるのでしょうか。

フローラン・エオー氏:

バレルは、基本的にはイントネーションを調整するためのパーツです。バレルが上管から分かれている利点は、チューニングができることです。ただし、バレルは音色にも影響します。内径、つまりボアの連続性が、できる限り保たれていることが大切だからです。

ベルの主な役割は、やはり音のパワーです。ただ、ベルもクラリネット全体に影響します。特に、超高音域の発音やレガートにも関わります。

結局、何をもたらすかを一つに定義するのは難しいのです。すべての要素の組み合わせが、どのように響くかということになります。

ベルで確かめる、音のパワーと高音域の反応

ベルは、どのように選ばれてきたのでしょうか。

エオー氏:

エリック・バレ(ビュッフェ・クランポンの開発責任者)が話してくれたのですが、ジャック・ランスロが工場に来ていた時代、ベルが入った箱がありました。そして、一つ一つのクラリネットについて、どのベルが合うか、どのベルがその楽器を最もよく引き出すかを試していたそうです。

当時、ランスロがベルに求めていたのは、まずパワーでした。当時のクラリネットの音は現在よりも小さかったので、よく鳴り、音を発展させるベルが重要だったのです。

彼はかなり強い音で吹き、楽器が十分に音を発展させるかどうかを確かめていました。実際、ベルはパワーに関係します。これは聴いて分かる要素のひとつです。

一方、ミシェル・アリニョンは少し違う点を見ていました。彼は、ベルがクラリネットの非常に高い音域の発音に大きな影響を持つことに気づいていたのです。

ベルはクラリネットの下にあるので、低音域に影響すると思いがちです。しかし実際には、高音域、特に超高音域の発音にも大きく影響します。

ミシェル・アリニョンは、ドビュッシーやラヴェルの短く繊細なフレーズを使い、ベルによって超高音域の発音や反応がどう変わるかを確かめていました。

参考映像

クラリネット製作とグレナディラをめぐる記録

グレナディラ(アフリカン・ブラックウッド/ムピンゴ)という素材とクラリネット製作をめぐるドキュメンタリーです。映像には、ミシェル・アリニョン氏が完成したクラリネットを試奏し、音質や響きを確かめる場面も収められています。

バレルで確かめる、音程、音色、内径の連続性

バレルを見直すことには、どのような意味がありますか。

エオー氏:

たとえば、暑くてピッチが高いときには、バレルを少し抜いて調整します。バレルが上管から分かれているのは、必要なときにイントネーションを調整するためです。

一方で、音色に関わるのが、バレルと上管の内径の連続性です。ちょっとしたコツとして、新しいバレルを取り付けたときにクラリネットの中をのぞき、二つの内径がどのようにつながっているかを見ることもあります。

きちんと合っていると、バレルと上管の接合部がほとんど見えず、まるでひとつの管のように見えることがあります。反対に、うまく合っていないと、接合部分に小さな影、半月のようなものが見えることがあります。

もちろん、これだけで100%判断できるわけではありません。ただ、接合部がほとんど一体に見えるとき、多くの場合、よい結果につながります。

また、バレルはマウスピースに近いので、非常に多くの負荷がかかります。演奏中の湿気や結露、スワブを通すことなどの影響を強く受けます。

バレルとベルの両方を見直す場合、どちらから試すとよいでしょうか。

自分のクラリネットがよく機能していて、ただ少し年数が経っている場合には、一般的にバレルの方が重要だと思います。バレルが最も大きな負荷を受け、湿気によって最も変化しやすいからです。

同じモデルのパーツに替えるのであれば、ベルよりもバレルを試す方が興味深い結果につながることが多いと思います。バレルの方が、年数による変化を受けているからです。

大切な本番やコンクールの前に、バレルを確認することもあるのでしょうか。

エオー氏:

あります。ひとつ例を挙げると、私の元生徒で、後にパリ・オペラ座のクラリネット奏者となった人物がいます。

その入団試験の前、私は彼に、マントの〈ビュッフェ・クランポン〉の工場へ行くことを勧めました。内径を見て、すべてに問題がないか確認しようと言ったのです。楽器のメンテナンス、特に内径の状態はとても重要です。

彼のB♭クラリネットは“Tradition”でした。そこで、エリック・バレが同じ“Tradition”の別のバレルを用意しました。“Rondo”や“ICON”ではなく、同じモデルの別のバレルです。

彼はその変化にとても満足していました。そして、その数日後、入団試験に合格しました。

つまり、年数を経たクラリネットでは、同じモデルの別のバレルに替えるだけでも意味があります。新しいクラリネットなら、通常はすでに選定されていますから、必要性はそれほどありません。ただし、“Rondo”のように本当に異なるバレルを試したい場合は別です。“Rondo”は形状によって音色が少し違うので、その場合は試す価値があります。

バレルやベルは、楽器全体との組み合わせで考える

バレルやベルの違いを、個別の特長だけで説明することはできるのでしょうか。

エオー氏:

新しいバレルを試すとき、すべての特徴を一覧にして、完全に説明するのは難しいと思います。まず、全体の組み合わせだからです。楽器、マウスピース、リード、バレル、ベル、そのすべてが関係します。

ベルを替えると、全体のバランスが変わります。そして多くの場合、奏者は「これが好きだ」と感じます。色彩、音の柔らかさ、吹き心地、その全体です。

第2章

“Rondo”と“ICON”で広がる音色の選択

エオーさんご自身は、“Rondo”バレルをどのように感じていますか。

エオー氏:

私が使っている“Divine”は、もう10年以上になります。そこに“Rondo”バレルを付けたとき、音色に新しい生命感のようなものが加わったと感じました。

“Rondo”には、とても美しい音色があります。柔らかく、丸く、そして明るさもある。音色の色合いや響きが変わり、自分のクラリネットを吹くことが、また楽しくなりました。

もちろん、楽器はいずれ新しいものに替える時期が来ます。ただ、その途中で、慣れた楽器に新しい息吹を与えることができる。“Rondo”バレルには、そうした魅力があると思います。

“Rondo”と“ICON”で広がる音色の選択

“Rondo”バレルと“ICON”バレルの違いは、どのように考えればよいでしょうか。

エオー氏:

“Rondo”は、より丸く、柔らかな音の方向性を持っています。一方、“ICON”は、より音色感があり、明るく、クリアな方向性です。少し年数を経て音色感が足りなくなった楽器に、“ICON”が色彩や明るさを戻してくれることもあります。

大切なのは、どちらが優れているかということではありません。非常にクリアで明るい音を求めるなら“ICON”、もう少し柔らかく丸みのある音を求めるなら“Rondo”が合うかもしれません。

ただし、「オーケストラ奏者だから“Rondo”」「ソリストだから“ICON”」というように、奏者のタイプだけで決めることはできません。最終的には、実際に吹いて気に入るかどうかです。

“Rondo”の音の方向性が好きだと感じたら、可能であれば二本、三本と試し、その中に自分のクラリネットによく合うものがあるかを確かめるとよいでしょう。

短いフレーズで、違いを聴く

試奏では「人生を語らない」

バレルやベルを試すとき、どのように比べるとよいでしょうか。

エオー氏:

ジャック・ランスロの言葉で、とても面白いものがあります。

楽器やバレル、ベルを選ぶときは、「人生を語ってはいけない」と言っていたそうです。

つまり、何時間も吹き続けてはいけないということです。長く吹いていると、体がそのセッティングに慣れてしまい、最初に感じた違いが分かりにくくなります。

大切なのは、短いフレーズを使って比べることです。自分の普段のバレルで短いフレーズを吹き、次に別のバレルで同じフレーズを吹く。すると、すぐに感じることがあります。

吹きやすいのか。
抵抗はどう変わるのか。
音色や丸みはどう感じられるのか。
アタックは遅れないか。
超高音域やレガートの反応はどうか。

そうしたことを、短いフレーズの中で聴くのです。長く吹くより、その方が違いをつかみやすいと思います。

発音、響き、レガートを聴く

具体的には、どのようなフレーズで試すとよいでしょうか。

エオー氏:

目的によって、いくつかの短いフレーズを使うとよいと思います。

たとえば、Aクラリネットで超高音域の発音を試すなら、ラヴェルの《ピアノ協奏曲 ト長調》の緩徐楽章にあるソロがよい例です。とても短く、繊細なフレーズです。

B♭クラリネットであれば、ドビュッシーの《クラリネットのための第一狂詩曲》の中にも、高音域の繊細なアタックを確認できる短い部分があります。

音のパワーを聴くなら、リヒャルト・シュトラウスの《デュエット・コンチェルティーノ》もよいです。フォルティッシモのフレーズがあり、高音域と低音域、レガートとスタッカートを確認することができます。

レガートや跳躍、反応のしやすさを見るなら、ラヴェルの《マ・メール・ロワ》の「美女と野獣の対話」もよい例です。クラリネットが「美女」を受け持つ、美しいソロです。ピアノで、跳躍を本当にレガートでつなげる必要があります。

こうした短いフレーズを、同じ条件で比べます。長く吹くのではなく、同じフレーズを使って、発音、響き、レガート、抵抗感、反応を聴くのです。

最後に、バレルやベルを試す方へメッセージをお願いします。

エオー氏:

バレルやベルは、マウスピースやリード、リガチャーと同じように、そのときの音響やセッティングに応じて選べるアクセサリーです。

私自身、“Rondo”を付けたことで、自分のクラリネットを吹くのがまた楽しくなりました。音の色や丸み、響きが変わり、演奏する喜びが少し新しくなったのです。

あるホールでは“Rondo”が合い、別の日には元のバレルが合うこともあるでしょう。そのときの音響やリードとの組み合わせで、どのバレルが最もよい結果をもたらすかを選ぶ。それが、私にとってのアクセサリーの役割です。

―― ありがとうございました。

フローラン・エオー

Profile

フローラン・エオー|Florent Héau

フランスを代表するクラリネット奏者のひとり。パリ国立高等音楽院でミシェル・アリニョンに師事し、1991年から1995年にかけて複数の国際コンクールで第1位を受賞。現在はパリ地方音楽院およびローザンヌ高等音楽院で教鞭をとり、大阪音楽大学、上海音楽院でも客員教授を務めています。

また、〈ビュッフェ・クランポン〉のR&Dテスターとして、演奏家の視点から楽器開発にも関わっています。

クラリネットショールーム|Clarinet Showroom
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