
バンベルク交響楽団の新星オーボエ奏者が語る―音色へのこだわりと “ヴィルトーズ” との出会い
若手実力派オーボエ奏者として注目を集めるヤノシュ・ヴォレンヴェーバー氏。音楽一家に生まれ育ち、幼少期から父ドミニク・ヴォレンヴェーバー氏に師事。ベルリン・フィルハーモニー・カラヤン・アカデミーでさらなる研鑽を積み、2025年1月よりバンベルク交響楽団の首席オーボエ奏者に就任しました。初来日での印象や愛用する “Virtuose(ヴィルトーズ)” モデルの魅力、そして所属オーケストラの特色や楽器選びのこだわりについて伺いました。(2025年春)
Q. 初めての来日とのことですが、日本の印象はいかがですか?
今回が初めての来日なのですが、日本の文化や人々、そして音楽の環境には本当に感銘を受けています。特にクラシック音楽への関心の高さには驚きました。ヨーロッパとはまた違った雰囲気があり、とても新鮮で、すっかり魅了されています。
Q. ご自身の音楽的なバックグラウンドについて聞かせてください。また、オーボエ奏者として影響を受けた先生についてもお聞かせください。
私は音楽一家に生まれ育ちました。両親ともにオーボエ奏者だったため、物心ついた頃からオーボエの音に囲まれて育ちました。音楽学校では最初の先生にしっかりと基礎を学び、その後は父であるドミニク・ヴォレンヴェーバーからレッスンを受けました。父とはとても良い関係で、今でも時々教えてもらっており、信頼できる師でもあります。そして、ベルリン・フィルハーモニー・カラヤン・アカデミーに入ってからは、ジョナサン・ケリー氏のもとで学び、大きな影響を受けました。今年の1月からは、バンベルク交響楽団に所属しています。

初来日のヤノシュ・ヴォレンヴェーヴァー氏。日本人のクラシック音楽への関心の高さに驚いたという。
Q.バンベルク交響楽団について教えてください。
バンベルク交響楽団は、人口約7万人の小さな街バンベルクを拠点に活動していますが、ドイツでも屈指の素晴らしいオーケストラの一つだと思います。海外ツアーも頻繁に行っており、アジアやアメリカ、南米にも何度も足を運んでいますし、ドイツ国内でも小規模なツアーを定期的に行っています。
楽団のメンバーはとても素敵な人たちばかりで、リラックスして演奏できる環境です。また、このオーケストラは「ボヘミア風の音色(Bohemian sound)」を持っているのが大きな特徴です。これは、深みがありながらも柔らかく温かみのある響きで、少し暗めのトーンが特別な魅力を生み出しています。
Q. オーボエを始めたきっかけは何だったのでしょうか?
両親がオーボエ奏者だったとはいえ、決して強制されたわけではありません。兄弟は全部で5人いるのですが、オーボエを選んだのは私だけです。9歳の頃にリビングで弟と一緒にいろいろな楽器を試していたのですが、弟はトランペットに興味を持ち、私は自然とオーボエに惹かれました。最初はもちろん上手く吹けませんでしたが、音の響きに惹かれたのを今でも覚えています。

ヤノシュ・ヴォレンヴェーヴァー氏
Q. 現在使用されている “Virtuose(ヴィルトーズ)” を使い始めたのはいつ頃ですか?また、選んだ理由を教えてください。
以前はとても古い “Prestige(プレスティージュ)” を使っていましたが、新しい楽器を探していたときに “ヴィルトーズ” に出会いました。決め手となったのは、音の均質さと音色の美しさです。楽器としての個性を持ちながらも、自分の音楽的な個性をしっかりと表現できる点が魅力でした。特に高音域はとても歌うように響き、豊かな表現力が感じられました。他のブランドでは得られなかった魅力がありました。
Q. “ヴィルトーズ” を所属しているバンベルク交響楽団で使ってみた際に周囲の反応はいかがですか?
“ヴィルトーズ” は(上管が長いため)見た目にも特徴があるので、「これはイングリッシュホルンですか?」と間違われたこともあります(笑)。でも、それだけ注目されているということでしょうし、興味を持ってくれる人は確実に増えています。また、様々な楽器奏者の方から「音に個性があってすごくいいね」と声をかけていただくことも多いです。
Q. ビュッフェ・クランポンの “Légende(レジェンド)” も吹かれたことがあるそうですが、“ヴィルトーズ” と比較して、それぞれの特徴や印象を教えてください。
数日間、“レジェンド” を試奏する機会があり、実際にコンサートでも使用しました。シューマンのロマンスのうち1曲を “レジェンド” で、残りを “ヴィルトーズ” で演奏したのですが、メカニズムの精巧さという点では “レジェンド” にやや洗練された印象を受けました。一方で、音色には落ち着きがあり、ややダークなニュアンスが感じられました。私は、より輝きのある “ヴィルトーズ” の音色に魅力を感じており、演奏者として表現の幅がより広く引き出せるように思えたことから、“ヴィルトーズ” を選んで演奏しています。

写真左から、ヤノシュ・ヴォレンヴェーヴァー氏、 テクニカルサポート 青柳亮太
Q. ドイツのオーケストラで好まれるオーボエの音色に、何かトレンドのようなものを感じますか?
はっきりとは言えませんが、個人的には最近、やや甘くて柔らかい、いわゆるフレンチ・スタイルの音色が好まれる傾向があるように感じています。“ヴィルトーズ” は、そうした甘い音色も出せますし、輝きのある音も表現できる楽器です。まだ比較的新しい音色かもしれませんが、聴衆の方々も徐々にこの音に親しんできているように思います。今後、“ヴィルトーズ” の音色は、ドイツのオーケストラにおいてもますます受け入れられ、広がっていく可能性があると感じています。
Q. ビュッフェ・クランポンというブランドに対して、どのような信頼や魅力を感じていますか?
プロのオーボエ奏者が開発に関わっているという点に大きな信頼を感じています。実際に知っている奏者も関わっていて、彼らの真摯な取り組みや熱意が伝わってきます。そうした姿勢がブランドへの信頼につながっています。
Q. オーボエ奏者として、楽器を選ぶ際に最も重視するポイントは何ですか?
やはり「楽しく吹けるかどうか」が一番大事ですね。楽器が自分に合っていて、音程も良く、表現の幅もあると、自然と吹いていて楽しい気持ちになります。それが私にとって最も重要な要素です。
ありがとうございました。